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2026年1月21日

礼節の心を育む「道場」を建てる。大成ユーレックの価値あるシゴト

#TAISEI's NOTE

「東競武道館」新道場(大田区大森)
「東競武道館」新道場(大田区大森)

文:くらしと街のコンシェルジュ編集部

がらんとした道場の壁には「文武両道」と書かれた書額がきりりと掛けられ、天井の大型空調機からは冷気が吹き出しています。ここは、地域に開かれた剣道道場「東競武道館」。夕暮れ時には少年少女剣士の、その後には高校生以上の大人たちの稽古が始まります。道場に入る時の挨拶の声、胴着に着替え練習を始めるときの挨拶の声、竹刀と竹刀が交わる音に加え面と面が激しくぶつかり合う音が道場内に響き渡り、最後に終わりの挨拶の声と、ひときわ賑やかな空間に変わります。

半世紀以上の歴史あるこの道場は2024年11月に竣工しました。設計施工を担ったのは大成建設グループの大成ユーレック。PC工法(壁式プレキャスト鉄筋コンクリート造)のパイオニアとして、数多くの中高層集合住宅を施工してきた大成ユーレックにとっても、この鉄骨造の道場の事例は貴重なものだといいます。

今回は「東競武道館」を所有する「一般財団法人日本モーターボート競走会」関東地区理事の大内桂太郎様、剣道の普及啓発を担う「一般財団法人全日本剣道道場連盟」専務理事の豊村東盛範士、そして東競武道館の設計を担当された、大成ユーレックの川村直広さん(現・営業本部)に、道場にまつわるお話を伺いました。

子どもたちの心技体を磨く剣道道場「東競武道館」

稽古の様子

編集部:「東競武道館」とはどういった施設なのでしょうか。

大内桂太郎様(日本モーターボート競走会関東地区理事):日本伝統の武道とりわけ剣道の普及を目的とした道場で、地域の幼稚園の年長さんから中学生まで40名余りが剣道の稽古に通っています。

大内桂太郎様(日本モーターボート競走会関東地区理事)
大内桂太郎様(日本モーターボート競走会関東地区理事)

−ここは「日本モーターボート競走会」が所有されているのですよね。

大内様:はい。日本モーターボート競走会は、国土交通大臣より指定された日本で唯一のボートレースの実施・運営を担う団体で、売上金の75%はお客様の払戻金に充てられています。残りの25%は運営経費を除いて、レースを主催する地方財政への貢献に充てられ、小中学校や体育館、美術館、公営住宅や病院など公共施設の建設に使われています。また、25%のうちのおよそ3%が日本財団への交付金となり、財団を通じて国内外の公益事業を実施している団体への支援が行われています。1971(昭和46)年設立の「東競武道館」もその一つです。

東競武道館旧道場の写真(2020年撮影)
東競武道館旧道場の写真(2020年撮影)

−「全日本剣道道場連盟」とはどのような団体なのでしょうか。

豊村東盛範士(全日本剣道道場連盟専務理事):剣道を通じて少年少女を育成する全国各地の道場の活動を支援し、剣道普及の推進を目的としています。1963(昭和38)年に発足し、任意団体として活動後、1974(昭和49)年に財団法人日本船舶振興会(現・日本財団)の支援を受け、文部省認可の財団法人となりました。2013(平成25)年に一般財団法人へ移行しています。

道場の壁に掛けられた木札。相談役の橋本龍太郎・元内閣総理大臣は、剣道教士で連盟の第四代会長
道場の壁に掛けられた木札。相談役の橋本龍太郎・元内閣総理大臣は、剣道教士で連盟の第四代会長

−子どもたちに、剣道を通じて何を身につけて欲しいとお考えですか?

豊村範士:世の中からいじめや意地悪はなくならないものと考えて、それに耐えうる強い心を持ってほしい。剣道は心技体を鍛える武道といわれますが、特に大事なのは心です。剣道は礼節を重んじますから自然と心も育ちます。だからといって、ことさら「礼を重んじよ」と大袈裟にして人の顔色を伺うような態度は育てたくありません。

豊村東盛範士(全日本剣道道場連盟専務理事)
豊村東盛範士(全日本剣道道場連盟専務理事)

−ではどのように指導されているのでしょう。

豊村範士:立派な人間というのは、社会的に偉い人という意味ではないですよね。きちんと挨拶ができて、どんな職業の人間であっても見下さず敬意をもって接することができる人です。剣道は礼に始まり礼に終わります。道場に入る時に礼、座ったら礼、立ったら礼、退出するときに礼。最初はできませんよ。ちょろちょろしたり勝手に動き回ったり。それでも叱らずに根気よく続けていると倫理的なマナーが自然と身につくんです。

体験参加者の稽古の様子
体験参加者の稽古の様子

−いまの時代のお子さんたちのことはどう感じていますか?

豊村範士:昔に比べると一人っ子で兄弟喧嘩もせず、親にも怒られたりした経験のない子どもが多くなりました。だから社会に出るとちょっとした言葉で傷ついてしまう。剣道の稽古は痛みを伴い、疲れるものであり、これを通じて打たれ強さ、困難に負けない強い心を育むことができる。いじめや社会での理不尽な出来事に直面した際、剣道の経験は生きる力になると信じています。

道場を建てるという稀なるシゴト

稽古の様子

編集部:大成ユーレックにとって「東競武道館」は貴重な事例ということですが、それはどのような点についてでしょうか。

川村直広さん(大成ユーレック):弊社は創業60余年で相撲部屋やテニス場、コンビニの店舗等における施工実績はあるものの、スポーツ施設の建設はほとんど事例がありません。特に今回のような「武道」を通して「地域の子供たちに剣道を学んでいただく」という社会貢献の性質をもった施工事例は初めてです。ノウハウが少ないため、関係各所と密に連携を取りながら何度も打合せを行い進めてまいりました。

川村直広さん(当時、大成ユーレック建築部で設計を担当。現在は営業本部CS推進部設計室に所属)
川村直広さん(当時、大成ユーレック建築部で設計を担当。現在は営業本部CS推進部設計室に所属)

−工事自体も「ローリング計画」と名付けられた特殊なものだったと伺っています。

川村さん:はい。建物の一部を解体してそこに新しい建物を建てた後、次の部分の解体・建設へ進むという具合に、段階的に建て替え工事を行うのがローリング計画です。以前の「東競武道館」は北棟選手宿舎と一部つながっていて、宿舎を機能させながら建て替え工事を行う必要がありました。そこでまずは、南棟選手宿舎を選手全員が宿舎として利用できるように改修をしてから、武道場及び北棟選手宿舎を解体し、新たな選手宿舎の新築工事を行ないました。そして、宿舎機能を新しい選手宿舎に移してから、残りの南棟選手宿舎を解体してそこに新しい武道場を建てていくという具合です。比較的小規模な建物計画にもかかわらず、改修から竣工までに4年という長い歳月を要しました。地域の皆様には、その間別の場所で練習を行っていただくなどご不便をおかけしましたので、後に完成を待ち望んでおられたとお聞きした時には感無量でした。

ローリング計画工程イメージ
ローリング計画イメージ図

東競武道館外観
東競武道館

−こだわった点はありますか。

川村さん:どうしたら剣道場として使いやすく快適であるかを、剣道道場連盟やモーターボート競走会の方々と前もって打ち合わせをさせてもらいました。剣道の道場は特に床材が大事だということで、そのことを重点的にご相談させていただきました。

豊村範士:床材は本当に大事です。道場は夏は暑いし冬は寒いので、エアコンをつけるでしょ。そうすると湿度の変化で床材が歪んだりして、強い踏み込みで割れることもあるんですよ。

東競武道館の床材

川村さん:当初検討された杉の一枚板では割れてしまう危険性があることがわかりました。冷暖房による湿度変化で、無垢材は反りや歪みが生じやすく、そうなると全面的な張り替えが必要になり莫大な費用がかかってしまいます。最終的に、反りや歪みが生じにくい厚みのある集成材を採用しました。これが非常に良い結果をもたらし、この床板は反らないし全く傷んでいません。

稽古前の様子

川村さん:もう一つこだわった点として、地域の子どもたちの思い出や道場の歴史を受け継ぎたいという思いがありました。そこで、門の表札は新調せず旧道場のものをそのまま利用し、また、旧武道場の腰壁に使用していた杉板を工事中大切に保管していただき、その中で使用できるものを磨いて新道場の正面の腰壁に再利用しています。

かすかに傷跡が残る旧道場の床材を壁板に再利用
かすかに傷跡が残る旧道場の床材を壁板に再利用

これからも社会に貢献できる企業として

川村直広さん
川村直広さん

編集部:「東競武道館」の施工事例を経験して、何か変化はありましたか。

川村さん:そうですね。「ローリング計画」は当社でも初めての経験でしたので、本当に大変で稀な経験をさせていただきました。

− どういう点が難しかったでしょうか。

川村さん:宿泊施設を運用しながら工事を進めていたので法的な認定も必要ですし、利用者の生活に支障が出ないよう工事の時間帯を見直したり、工事中に出入りするための安全通路を確保することを考慮し、建物の位置を含め綿密な計画が求められました。そうした状況の中工事が進められていくので、いくら安全を確保しているとはいえ、現場の担当者は緊張感を持つ日が続いたと思います。最大限に知恵を絞って、関係部署と協力して完成した建物です。大変達成感があり自信につながりました。

−道場という建物だったことも何か変化をもたらしたのでしょうか。

川村さん:そうですね。工事自体が貴重な事例でしたが、地域の子どもたちが使ってくれる建物に関われたことは自分の財産になったと思っております。道場では、保護者の方々も参加される総勢100名以上になる新年会を開催されたそうで、とても嬉しく思います。また、マンホールトイレ、防災かまどベンチを設置していたり、備蓄倉庫も備え付けていたりと、避難所としての機能を併せ持った建物でもあります。また日中など空いている時間帯には道場としてではなく、地域の方にも広く使っていただけるよう柔軟に開放して地域交流の場にもなっているそうです。今後もこうした事例を重ねていけたらと思います。

お話しをお伺いした3名
本日は、貴重なお話をどうもありがとうございました

取材後に、稽古を見学させていただきました。

子どもたちの掛け声と床を踏み鳴らす足音が充満し、5歳の体験参加者から高校生にも見える体格の良い経験者までが一つの道場で稽古をする。子どもたちはみな背筋を伸ばして礼をし起立をする。大きな声を振り絞り、竹刀を打ち込む。小さい子が竹刀の先を上向きに保ったままでいるのは難しい。上の子が下の子を見る。面・小手・胴。人を打ちそして打たれるという経験。名前を呼ばれ大きな声で返事をするということ。喧騒の中で範士の声に注目するということ。

「少年剣士たちと接すると礼儀ができているのがわかる。これは剣道の技術以上に大切なことで、受け継がれていくべきもの。当たり前のことなんでしょうけれど、それができない人も多いですから」大内様の言葉を思い出しながら、礼節の心が育つとはこういうことなのかと現場を目の当たりにした気持ちで、まだ稽古が続く道場を後にしました。

稽古の様子

大成ユーレックロゴ

Photo:Daisuke Takashige