価値あるものを創る。 妥協なきものづくりを貫いて95年。 そこにある想いとは。
創業者・佐藤秀三手書きの図面(住友那須別邸)/Photo : Kaz Koyama
文:くらしと街のコンシェルジュ編集部
総合建設会社「佐藤秀」は、昭和4年の創業以来、「価値あるものを創る」との志を胸に、お客様の想いをカタチにしてきました。妥協のないものづくりの姿勢は、お客様のみならず、設計者様からもご評価いただき、世界的な建築家の作品に携わる機会にも恵まれています。その背景には、今日まで脈々と受け継がれている、創業者佐藤秀三の建築に対する姿勢があります。
受け継がれる精神|社員一人ひとりに宿る妥協しないものづくりの
姿勢は、一人の建築家の想いから。
創業者・佐藤秀三(晩年)
俣野別邸(再建)/Photo : BAUHAUS NEO
創業後、秀三は現場員や職方と真剣なやりとりを重ねながら、徹底した造りこみを実践していきました。施工に問題があれば現場で修正するのはあたりまえ、職人がやり直しの指示に従わない時には、できあがったものを壊してでもやり直しをさせることもしばしばあったそうです。木材へのこだわりも強く、自ら山へ出向いて立木を指定し、部材として使う場所まで指示したほどで、ある時は、立ち並ぶ見事な栗の木に一目ぼれし、一山全部を買い取ってしまったという逸話も残っています。その妥協しない秀三の姿勢は、次第に世評を高めていきました。
秀三は、晩年まで65年の間に280以上の建築の設計・施工を手掛けました。中には、国の重要文化財に指定されたものもあります。その作風は、伝統的な和の様式に洋風建築のテイストを取り入れた品格漂うデザインが特徴で、佐藤秀調、洋風すきやと評されることもありました。秀三は存命中、「建物はお客様のために造るもの。自分のための作品ではない」と、作品集の出版を固辞し続けました。また、政財界の要人の邸宅を手がけることが多かったこともあり、建築写真が残されたものはごくわずかですが、手書きの図面は貴重な資料として大切に保管されています。
佐藤秀三による住友那須別邸の設計図。描きこまれた等高線、建物の角度や配置、植栽などを見ると、現地をよく調査していることが読みとれる。/Photo : Kaz Koyama
事業のあらまし|会社を特徴づける三本の柱
高級住宅「半島の家」|周辺の地形や気候、自然環境の魅力と脅威を表現した設計。コンクリートの斜めのテクスチャーは、岩山を削り出したときの独特な堆積構造をイメージしたものです。設計:マウントフジアーキテクツスタジオ/Photo : Ken'ichi Suzuki
高級住宅「ヤマノイエ」|緑豊かな傾斜地に建つ別荘建築。木々が茂る中庭を囲むように建物が配置されています。設計:津野建築設計室/Photo :Masao Nishikawa
高級住宅「G邸」|佐藤秀三が得意とした棟持柱つきの大屋根で、そのダイナミックなデザインは「佐藤秀調」とよばれた当社独自のスタイルを受け継いでいます。設計:佐藤秀/Photo : BAUHAUS NEO
社寺建築「成田山新勝寺 額堂」修復|開基1080年記念事業プロジェクトとして、額堂の修復と耐震補強工事を施工したものです。この建物は、国の重要文化財に指定されています。/Photo : BAUHAUS NEO
社寺建築「泉岳寺 新書院」新築|開創400年記念事業により、戦災で焼失した書院を再建したものです。総木造平屋建の本格的な書院造を再現しつつ、近代的な設備を完備しています。設計:望月敬生建築設計室/Photo : BAUHAUS NEO
確かな技術|匠集団が実現する伝統の木造建築
総合建設会社として、先端の新技術、現代的なデザイン性を備えた都市型・複合型の現代的宗教施設の分野でも多くの実績を重ねてきました。佐藤秀の木造技能部門は、技術の革新に努め、お客様の多様なニーズを実現する現代の匠集団です。
木造建築「自由学園みらいかん」|教育の一環として続けられてきた植林活動によって生徒の手で育てられてきた木材を、柱、梁、壁、床、机、椅子など、適材適所に用いて作られています。 学園の歴史と理念を象徴する建物です。設計:松井亮建築都市設計事務所/Photo : BAUHAUS NEO
本社に設けた「原寸場」では、原寸の図面を起こし、1/100の縮小図面ではわからなかった反りの見え方や、各部材の接合部の納まりなどを正確、詳細に確認しています。また、複雑な木組みは、ここで1/2の模型を作成し、事前に実際の施工状態を確認して進めます。/Photo : Kaz Koyama
感性との共創|日本を代表する建築家と共創し、感性と想いをカタチにする
隈研吾建築都市設計事務所との共創「サニーヒルズ南青山」|地獄組みと呼ばれる伝統的な組木格子が印象的な店舗建築です。釘を使用せず、60cm角の木材だけで構成する立体構造は、熟練の大工職が1本ずつ組み上げました。/Photo :都市建築写真事務所
妥協しないものづくりのためには、コミュニケーションが重要です。「佐藤秀」では、設計と施工の間の調整を丁寧に行い、数々の困難な課題を一つずつ解決しながら、品質とコストのバランスを取り、安全と工期を守って、建築を実現します。また、現場ごとに発生するさまざまな課題には、建築・設備・電気など、各技術分野のエキスパートが、現場と連携して的確に答えを出し、チーム全体の総合力で「佐藤秀」の品質を守っています。
安藤忠雄建築事務所との共創「K邸」|関東エリアにおける安藤忠雄建築事務所の初期の住宅建築です。高い仕上げ精度が求められるコンクリート打放しの外壁、幾何学的造形が特徴です。/Photo:BAUHAUS NEO
佐藤秀は、これからもお客様一人ひとりに真摯に向き合う姿勢はそのままに、大成建設グループの一員として、伝統進化の精神をもって成長していきます。来るべき100周年はその経過点にすぎません。
お話を伺った「佐藤秀」代表の村野忠男さん(中央)、営業部の田中さん(右)と竹村さん(左)。