TAISEI GROUP PROJECT
大成建設グループ くらしと街のコンシェルジュ
大成建設 Technology & Solution テクノロジー&ソリューション(テクソル)

先進、安心、安全。プレキャスト鉄筋コンクリートが生まれる、その場所をたずねて

2022.09.22

文:くらしと街のコンシェルジュ編集部




大成建設のグループ企業として集合住宅建設に高い技術力を誇る大成ユーレック。今回は、その主力商品であるPC工法の部材「PC板」を製造する川越工場を訪ねました。


案内してくれたのは川越工場長の佐相。PC板の製造管理をはじめ、工場内の安全・衛生管理、工程管理、原価管理など、工場全体の業務を統括管理されています。


この日はまず、広大な敷地内にある工場を案内してくれました。汗が滴り落ちるような猛暑の中、にこにこと温和な笑顔で作業員たちに声をかけ、取材スタッフには分かりやすい言葉を選んで作業の内容を一生懸命に説明してくれる様子は“みんなの頼れる優しいお父さん”といった雰囲気。


工場見学を通じてまず驚かされたのが、工場の中も外もすっきりと片付けられ、快いまでに整理整頓が行き届いていたこと。暑くはあっても、爽やかなくらい清潔感あふれる印象だったことです。

川越工場は、現在「省エネ」と「創エネ」につながる技術を導入し、既存建物をZEB(ゼロ・エネルギー・ビル)としてリニューアルする取り組みである「グリーン・リニューアルZEB」を工事中。

同じく川越工場では、建築物省エネルギー性能表示制度BELS:最高評価☆5、PC部材品質認定制度:H認定、ISO(国際標準化機構)においては 9001(品質マネジメントシステム)および14001(環境マネジメントシステム)を取得。


建築の基本は掃除にあり。人に見せたくなる工場




「優れた品質の安全安心なPC板をつくるために、心構えの部分も含めて、私たちが全ての基本として大切にしているのが、『綺麗な工場、人に見せたくなる工場にする』ということです。こればかりはずっと口うるさく言い続けてきましたから、きちんと実現できていると思っています。


私自身も現場仕事から始めましたが、その時に上司から繰り返し言われたのは『建築の基本は掃除にあり』ということでした。きちんと整理整頓することは、ひいては品質向上にも安全にも繋がりますから、決して妥協できません。

道具の清掃も丁寧に。

ここは工場なのだろうか、と思わず目を凝らすほどに整理整頓、そして掃除が行き届いた工場内。

そして品質や安全について言えば、作業するのは人ですから、きちんと注意するべきことは常に口に出し続けていかないと、注意事項をつい忘れてしまうこともあります。特に『変化あるところにエラーあり』という教訓の言葉から、例えばこれまでと担当者が変わったり、ちょっと流れが変わったりといったタイミングには、より一層の注意を払い、声出し・指差し確認をするように気をつけています。声を出して、指差し確認まですると、人為的なミスを70%も減らすことができるという報告もあります」


「まず確認」という、大成建設グループ全体に共通する安全衛生スローガンを実践する佐相。さらには安全担当と職長を連れ立っての週番パトロールを日課にしているといいます。常に自分とは異なる目線の人と一緒に現場を見て回ることで、より多角的なチェックになるのだそうです。


「不安全行動があった場合、自分の会社の人ではない人に注意するのは大変な勇気がいることですから、何か注意された時には『注意してくれてありがとう』と感謝の気持ちを持って言えるように、日頃からの挨拶やコミュニケーションを大切にしています。工場で働く10社の業者さんのうち1社にでもトラブルが発生してしまうと、歯車は途端に狂い始めます。もしもコミュニケーション不足があれば、重大なエラーにも繋がりかねません。コミュニケーションは、人と人をつなぐツールなのです」

こちらはバルコニーの床の均(なら)し作業。コンクリートは夏場であれば、1枚につき3、4時間で仕上がるという。その後、硬化のため養生する。

SDGsへの取り組みの1つとして、工場では大豆を使ったコンクリートの剥離剤を使用。環境に優しく、口にしても無害という安全性を誇る。


圧倒的な強度で人々の命を守り、豊かな未来をつくる




では大成ユーレックのPC工法には、どんな利点や強みがあるのでしょうか。


「木造と比べると、圧倒的な強度があります。あるいは同じコンクリート造でもRC(在来工法)と比べると、天候に左右される現場で鉄筋・型枠を組み、コンクリートを流し込んで躯体をつくる代わりに、建物の基本となる部材をあらかじめ工場で製造した後、現場へ持ち込んで組み立てるため、規格化された部材を安定した品質と価格で供給できること、また建設現場の手間が少なく、短い工期で済むこと、そしてそれによりコストが安くなることなど、有利な点が幾つもあります。


そして何より、大成ユーレックが建てた集合住宅は、2011年に発生した東日本大震災でも1棟も倒壊しませんでした。それくらい、壁式構造のプレキャストは強いのです」

完成したプレキャストコンクリート床板(ハーフPC板)。完成した製品は、1枚ごとにバーコードが貼り付けられ、出荷までしっかりと管理される。

広大な土地にコンクリート壁や床がずらりと並ぶその様は、まさに圧巻の一言だ。

自分たちのPC工法住宅がもっと浸透していたら、救うことのできた命がもっとあったはず……、と悔しさを滲ませながら語る佐相。でも、ここ川越工場でつくられたPC板は震災復興でも大きな役割を果たします。東北地方の被災地に運ばれ、短い工期で建てられることを求められた復興公営住宅の建設に供給されたのです。

コンクリート内の鉄筋状況。製造ライン内では細心の注意が払われ、組み立てられる。

職人の手作業によって丁寧に壁板にはめ込まれるタイル。その仕上がりは驚くほどに美しい。


社会のニーズに応える安心安全な製品づくりを目指して




また佐相が特にこだわるのは、コンクリートの品質。自社で練り上げているので、常にベストなパフォーマンスを出せるよう、見えないところでの調整が行われているといいます。

製造ラインでは練られたばかりの生コンクリートが運ばれ、5分以内にフレッシュな状態で流し込まれていく。

「生産においては、コンクリートの強度には特にこだわっています。近年ニーズの高まっている高層ビルでは、さらなる高強度コンクリートが求められますから、設計基準強度が100N/㎟までのハイスペックなものがつくれるように対処ができています。


何よりPC板の強さの秘密を見ていただいて、ご納得いただいて、最後に笑顔で『ありがとう』とおっしゃっていただけることが、仕事をする上での励みになっています。一人でも多くの方々に大成ユーレックの名前と、私たちのご提供するPC工法の建物の素晴らしさについて知っていただけたら、それに勝る幸せはありません」

川越工場長の佐相。工場で働く150名を超えるスタッフに常に目を配り、気さくに声をかける。

佐相の仕事の相棒であり神器である筆記具2本。ここぞ、という時の相棒として使い続けてきた思い入れのあるものだ。 同じ社内のスタッフが一級建築士の試験を受ける際、ゲン担ぎにと貸し出したこともあるそうで、結果は無事合格。

今日も、そして明日からも、川越工場は私たちの豊かな未来をつくるために、そして大切でかけがえのない命を守るために、稼働し続けていきます。
mail_outlineお問い合わせはこちら